液体水素カローラ完走 ~S耐富士24hオンライン観戦~

5月27日~28日にかけて実施されたスーパー耐久第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースをオンラインで観戦しました。
24時間すべてモニターを見ていたわけではなく、日々の雑務をこなしながら要所要所での観戦、というスタイルです。日程の余裕があれば富士スピードウェイに赴いて現場の空気を味わってきたかったのですが、今年は叶わず。

ラトシア公式noteでいきなりモータースポーツの話題が登場して唐突感があると思いますが、実は担当は子供の頃からの重度のクルマ好き。
クルマ好きの父親と某自動車メーカー勤務の叔父に囲まれた環境で育った担当が機械工学を学んで新卒で就職したのは、某自動車メーカー系のモータースポーツ会社でした。今にして思えば宝の山に囲まれたような環境で数年間過ごしていたのです。

しかしながら、目が覚めている時間の大半を工場内で過ごす生活に疲れを感じて別業界へ転職し、自動車は趣味で楽しむようになりました。

その後は、転職した会社のクルマ好きの仲間と共にサーキットやジムカーナの走行会に参加したり、富士スピードウェイで開催されているK4-GPという軽自動車の耐久レースに参加したり、という感じで趣味としてクルマを楽しんでいました。

あれから時は流れて「車輪が付いた乗り物でワクワクする世界を創出する」というビジョンを掲げる「株式会社ラトシア」に創業メンバーとして参画して現在に至っています。

そんな担当の視点では、水素エンジンを搭載した車両の開発現場として耐久レースへの参戦を選択しているトヨタ自動車には、尊敬しかありません。
1960年代のルマン(https://en.wikipedia.org/wiki/Rover-BRM)やインディ500(https://w.wiki/6mRv)にガスタービンエンジン車が出走したことがありましたが、それに匹敵する快挙だと思います。

液体水素カローラの予選タイム

液体水素カローラは、ST-Qクラスという他のクラスには該当しない開発車両が許されるカテゴリーからの参戦となっています。
佐々木雅弘選手のドライブによる予選タイムは 2分2秒567 と、ST-4クラスとST-5クラスの中間的な結果でした。水素ユニット搭載による重量増が150~200kg程度とされることを考慮すると、出力的にはST-4クラスの車両と同等程度ではないかと推測します。

ちなみに、富士では2分切りというのがチューニングカーによるタイムアタックのひとつの目安になっているので、感覚的にも中々速いぞ、という印象です。

液体水素カローラの決勝レース

レースの映像は、スーパー耐久とトヨタイムズの公式YouTubeチャンネルでライブ配信されていました。

24時間レースならではの夜間走行の映像は美しく、これがライブ中継されるのは嬉しい限り。
夜間に何度かクラッシュがあったり、明け方には赤旗中断もあったりして、ちょっと荒れましたが、レースの終盤で総合順位が入れ替わるなど見応えのある展開でした。

注目の液体水素カローラは、レース中に2回の水素ポンプ交換が必要だったとのこと。-253℃という超低温で動作するポンプは、連続使用すると8時間程度が寿命の目安ということなのでしょうか。もちろん、コース上での停止を避けることから、寿命ギリギリまで使い切るようなことはしないはずだし、劣化の状況も何らかの方法でモニターしていると思われるので、兆しが現れたら交換という運用だったのかもしれません。

また、交換作業時間は4時間近いそうで、相当な大手術が実施されたのだと予想します。
それを、設備が限られたサーキットのピットで実施できるということは、液体水素車両の大規模なメンテナンスが、工場内に特別に作った環境ではない、屋外のテンポラリーな場で実施可能だということです。
これこそが、世界の自動車メーカーにとっての脅威ではないかな、と思いました。

まとめ

液体水素カローラは、大きなトラブルも無く完走しました。事前のテスト時に発生した火災事故(https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/39234812.html)についても、原因が究明され確実に対策されていたことが、24時間レースに初参戦して完走という成果に繋がったのだと思います。

また、来年からはルマン24時間レースでも水素車両が参加可能とのことなので、更に過酷な状況下でのチャレンジにも期待したいですね。
現在、トヨタに加えてヒョンデとホンダが燃料電池車を市販している/していた実績があるので、それらのメーカーもルマンに参戦してくると非常に面白そうです。

24時間レースは、BEVだと充電済のバッテリーパックに換装するか初期のフォーミュラEのように車両を乗り換えるかしないと成り立ちませんし、高負荷環境ではバッテリーの熱的なマネジメントも相当苦しいと思われます。
これはBEVでは高負荷の長時間/長距離連続稼動が厳しいということでもあるので、バッテリーの技術的なブレークスルーに期待したいところです。

なお、ラトシアとしては石油由来の燃料を使用する内燃機関はオワコンで、時代はカーボンニュートラルだ、という主張はしません。

自動車という商品としては、電動車両の静かでスムースかつリニアな走りは魅力的だし、高回転型のガソリンエンジンをマニュアルシフトを駆使して走る楽しさも魅力的です。
また、自動車という個人が所有可能な移動手段の中で最も環境負荷が少ないのは、スズキ・アルトのような、背が低く(=空気抵抗が少ない)軽量な(=加減速に必要なエネルギーが少ない)軽自動車ではないかと考えています。

でも、環境負荷が少ないという理由で個人所有の自動車は軽自動車に限る、みたいな世の中になってしまうと、多くの人々にとって生活の彩りが削がれてしまうのではないでしょうか。

自動車の色々な選択肢が将来も残り続ける世の中であって欲しいと、改めて思った次第です …水素カローラの話題とはずれてしまったけれど。

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